「窓から考える空間とデザイン」

窓から家を考える“間戸”の住まい

新築住宅では「窓を大きく、できるだけたくさん」とご希望されることが多く、マンションでも可能なあらゆる面に窓が設けられ、窓が多いことがセールスポイントになっているようです。しかし、せっかく窓があっても、隣家の窓と向かい合わせで開けられない、庭に面する大きな窓から通りを歩く人に覗かれて落ち着かない等、色々な問題も見受けられます。本当に窓をたくさん設けることが良いのでしょうか。本当にその窓がそこに必要なのでしょうか。もう一度その機能を見直すことで、快適な住まいについて考えてみましょう。

日本の窓は “間戸”

窓という意味の英語windowは壁に開けられた“風孔”という意味であるのに対し、日本語の窓は柱と柱の間にある戸という意味で“間戸”が語源と言います。必要に応じて光や風、雨、視線を遮断したり調節したりするための柱の間の“戸”を意味していました。古い日本の建物は、光と視線を調節する格子戸や風雨と光を遮るしとみ戸、光を柔らかく通し視線を遮る障子など、様々な“間戸”がありました。これらが透過するもの、遮るものを選択する、いわばフィルターとしての機能を持ち、幾重にも組み合わされて必要な環境と空間を作っていました。

柱と柱の間の板戸や障子などのいろいろな間戸

天気の良い日中は天井にはね上げられているしとみ戸

しとみ戸や襖は閉めれば壁になる可動の壁であり、動かぬ壁や屋根も含めて、柱と梁の“間戸”と考えることができます。つまり、柱と柱、梁と梁の間をどんなフィルターにするか選択することで家が完成すると考えることができるのです。

フィルターを選択して組み合わせ、快適な環境づくり

この考え方は住宅を計画する上で役に立ちます。まず、敷地とその周辺の環境を見てみてください。隣の家は接近していますか。1階や2階から何が見えそうですか。覗き込まれそうな建物がありますか。借景できそうな良い景色や木々はありませんか。風の方向はどちらでしょうか。道路等何か音を発するものがありますか。このようなことを一つ一つ問いかけてみて下さい。何を遮り、何を透過させたいのかを見極めると、そこに必要な“間戸”が見えてきます。外部に対してだけでなく、内部同士の関係についても同じことです。音、風、光、熱、人、全てを遮断したければコンクリートの壁、音や風は遮断したいが、景色は取り入れたいなら、はめ殺しの窓、時と場合によって人や視線を遮断したり透過させたりしたいなら引戸の間仕切等、必要に応じて選択していくのです。

どのようなフィルターが必要か選択して間戸を決めていく

窓にする場合も、上からの光を透過させるならトップライト、人を行き来させるなら掃き出しの窓等。又、ガラスにもたくさんの選択肢があります。光や視線を通すにはクリアガラス、光は通すが視線を遮るには型ガラス、更に熱の出入りを遮断するにはエコガラス。その上、音を遮断したり、泥棒を遮断したりする機能が追加されたガラスもあります。
そして更に時間帯や季節によって光や視線の透過を上手に調節し補助するためにカーテンやブラインドがあるのです。
こうして、いくつものフィルターを組み合わせたり重ね合わせたりして、快適な住空間を作っていくことができます。まずは、どんな風にそこで過ごしたいかということから、周囲との関係、スペースとスペースの関係を見極めて、欲しい環境のための“間戸”を選択してみてください。
どこに窓が必要なのか、もしかしたらそこは壁の方が良いのではないか、そのようなことを考えていくと、自分にとって、その場所にとって、より快適な環境が作りだせることと思います。

 

*この文章は板硝子協会「エコガラス」ホームページにて連載されたコラムを一部加筆、修正したものです。