窓は「家の目」・世界との接点

窓は「家の目」・世界との接点

窓には光や風を入れる、暑さや寒さをしのぐ等、住環境にとって大切な機能があります。でも現代ではそれらのことは照明や換気、冷暖房等で人工的に作り出すことができます。では、窓は何故必要なのでしょうか。単純で基本的な窓の役割について見直してみましょう。

窓は「家の目」

現代の住宅は大きな窓をたくさん持っていますが、古くは覗き窓や物見の窓というような小さな開口部があって、窓は外の世界を見る「家の目」としての機能を持っていました。家に迫って来る来訪者や外の様子を小さな覗き窓からうかがって身の安全を確認するわけです。これは人が用心深い動物として生命の保全を確保しようとする本能的な行為です。
日本の家屋はもともと外部に対してオープンな作りになっていたので、家を囲う塀や城壁などにそういった小さな窓があいていました。玄関のドアについているドアスコープがその用途として今も使われています。
大きさはどうあれ、外部をうかがうということは窓の基本的な働きで、生命の安全を確認できるという安心感につながるのです。

世界との接点

窓のない完全に閉ざされた空間では安全が確保されているにも関わらず人は恐怖感を感じるものです。そのような空間に長い間閉じ込められると正気を失ってしまいます。窓から外が見えることがどれだけありがたいか、病室の窓や独房の窓を思うとご想像がつくことでしょう。人には常に何らかの方法で外の世界と接触していたいという欲求があります。
ヒッチコックの有名な映画で「裏窓」は、足を骨折したカメラマンの主人公が、窓から隣人の生活を眺めて日々を送り想像を巡らすというストーリーです。殆どが窓から見える風景だけで映画が作られています。歩けない主人公にとってはこの窓だけが外部との接点でした。これは窓の役割の一片を鮮明に表したものとして見てみると、とても興味深いものです。
住まいが人を拘禁することにならないように、内部と外部を結びつける接点が窓なのです。窓によって外部の世界に無限に広がる可能性や自由を感じることにもなるのでしょう。

窓は人にとって、住まいにとって、とても大切で必要不可欠なものということでしょう。

 

*この文章は日本板硝子協会「エコガラス」ホームページにて連載されたコラムを一部加筆、修正したものです。